平成極上契約結婚【元号旦那様シリーズ平成編】
私は清水の舞台から飛び降りる気持ちで目の前の眉目秀麗な男性に向かって、腰をほぼ直角に曲げた状態で頭を下げた。

穴があったら入りたい! けれど、もうあとには引けないっ!
 
目に入った自分の通勤用である紺のタイトスカート姿に、どうしてかっちりしたツービースでおしゃれをしなかったのだろうと後悔する。

顔が……上げられない……。

「いきなりどうした?」

腰に響くような彼の声に暴れる鼓動がさらに大きな音をたてた。

彼の前に突然飛び出た私に、彼の表情はあっけにとられている。

「ほら、顔を上げろよ。電話をかけてきたのは君だったのか」
 
思いがけなく、円城寺さんの長い指が私の顎にかかり上げられる。必然的に私の折った腰もまっすぐに。

「たしかに何かあったらと、名刺を渡したが」
 
円城寺さんは仕立てのいいスーツの袖を少し捲って上品なステンレススチールの腕時計へ視線を落とす。
 
バブルと言われている今、お金持ちの男性は金の腕時計を身につけているのをよく見かけるが私はギラギラしていて好きじゃない。
 
彼の腕時計はスイス製の目が飛び出るくらいの超高級品だろう。それが似合う男性だから。
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