さあ、有象無象
依頼人・三年D組の相田光輝の言い分はこうだ。
高校入学当初から趣味で利用していた無料登録の投稿サイトにおいて、推理小説やホラー、サスペンスのジャンルで励んでいた創作が昨今、趣味の範囲から飛び出し、運営や出版社からの依頼を受け書籍化の話が転がり込んできたそうだ。
元より趣味の延長線だっただけに相田は話を聞いて酷く驚き喜んだそうだが、書籍化への打ち合わせや担当者との話を進めていく中で第三者からの「不正投稿」を示唆するコメントが目につくようになった。
「…ふせいとーこー」
「所謂バッシングだな。SNSが普及した今のご時世ごまんと混在する。頭角を表せばそれだけ人の目に触れる。相田光輝の名作を揶揄し、アンチ…〝盗作〟を呼称するコメントが浮上したと」
「けどさっき相田先輩〝特定のアカウント〟って言ってたよね。運営に報告して酷似しているものは削除の申請出したって話だし、これ私達が出る幕ないのでは」
「この脳筋野ゴリラ。だから貴様は低俗なのだ。こう言うものは怨嗟や妬み、嫉みが関与した第三者の執拗さが備われば長丁場になる。ましてや無料で登録できるサイトであれば報告し消されてもまた新しいアカウントを作成出来る。鼬遊戯だ」
「問題は炎上やボヤを防ぐ為セルフレイティングを設けている投稿サイトにおいて、何故相田発祥の作品に限ってアンチコメントやバッシングが浮上したか…かー。だめ。わかんない。頭燃えそう」
「いっそ燃えろ」
隣を歩く越前の膝裏を蹴り飛ばせば呆気なく頽れた。
色白黒髪、日の下で生きることを良しとしないとでも言いたげな越前の身体は女子並みに華奢だ。学ランの下から覗く肌は病的故に青白く静脈が浮いているし、それでいて人形のように目鼻立ちの整った顔がマネキンのようで人間味がなかった。
これで身長が高いならまだいい。168らしい。力丸と2㎝しか変わらなかった。
優れた知識を備えた全知全能の神の子に対し、天は二物を与えない。
「では、我々に出来ることは投稿サイト24時間警備、バッシング該当コメントへの着手、報告の徹底か」
「それは力丸くん、きみが試行しろ。もれなく時間の無駄だ」
「なんでだよ」
「おそらく〝盗作〟をしている犯人、ここで仮にXとしよう。彼、乃至彼女Xの目的は混沌だ」