罰恋リフレイン

繋ぎ留めたい。薫に好きでいてほしい。
俺は薫に嫌われるのがこんなにも怖い。



◇◇◇◇◇



もしかしたら薫に嫌われてしまったのではないかと不安が消えなくて、高校を卒業しても距離を縮めることができずにいた。
一人暮らしを始めてしまうと物理的にも距離が離れ、未だにたった一回しか薫に触れていない。そのたった一回のキスが俺にとっては大事な思い出だなんて恥ずかしくて誰にも言えない。

調理師専門学校に進学した薫は毎日忙しそうで、電話も頻繁にはできなかった。
俺からLINEを送っても薫の返信頻度は高くなくて、そのことが俺を焦らせた。

薫の気持ちが離れていくようで不安を紛らわすためにダンスとバイトに打ち込んだ。

学園祭に薫を招待しようと思ったのは久しぶりに会いたかったのと、その日は俺の家に泊まってくれるのではないかと期待したからだ。
『薫の料理が食べたい、俺の家で作って』とお願いしたら嫌だとは言われなかった。無理強いしたいわけじゃない。でも薫の気持ちを確かめたい。

友人に学園祭に誰かを誘ったのかと聞かれたときに俺は彼女を誘ったのだと素直に言うことができなかった。俺が彼女だと思っても薫は俺を彼氏だと思ってくれているのか? そんな疑問が浮かんで消えてくれないから「高校の友達を誘った」なんて思ってもないことを言った。





大学まで来てくれた薫はしばらく会わないうちに増々可愛くなっていた。見た目の何かが変わったわけじゃない。でも可愛く見えてしまう。俺はどうしようもなく薫が好きだと再確認した。

ステージの裏に控えて出番を待っている時、スマートフォンからLINEの着信音がして画面を見ると『帰ります。今までごめんなさい』と薫からメッセージが届いた。
意味が分からなくて電話をかけると応答がない。

出番まで時間がない。客席をざっと見まわすと薫はいない。

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