罰恋リフレイン
外に出たのか? まさか本当に帰った?
嫌な予感がして俺は体育館を出て薫を探した。
人をかき分け正門まで走った。薫はすぐに見つかった。
「薫!」
大声に薫は振り返って足を止めた。追いついた俺を見返す薫の目は赤い気がする。
「どうして帰るんだ? 今までごめんなさいってどういう意味?」
「戻って。もう始まるよ」
質問に答えをくれないことが不安になる。
「何で帰るの?」
「今引き返せば間に合うから」
焦る俺と対照的に薫は冷静だ。そのことが俺を苛立たせる。
「薫!」
「別れよう」
「え?」
「あ、そうじゃないか。別れるんじゃなくて、もう解放してあげるね」
「は?」
言葉を理解できなくて聞き返す俺に薫は複雑な表情を向ける。
「本気じゃない告白を真に受けちゃってごめんね」
息を呑んだ。メールと同じ「今までごめんなさい」と言われて、熱くもないのに額から汗が出てくる。
「何言って……」
「罰ゲームだったのに本気にされて、勝手に彼氏になっちゃって困ったでしょ」
心臓が締め付けられたように苦しくなる。一番知られたくなかったことを薫の口から言われたことに頭が真っ白になる。
「私勘違いして恥ずかしいね」
「あの……」
「しかもお菓子渡されても重いよね」
「待って……」
今では薫の作ってくれるもの全部が好きだ。そう言いたいのにうまく言葉を出せない。薫は更に言葉をぶつける。
「一人で浮かれちゃって私痛いなぁ」
「薫……」
「不快な思いをさせてごめんね」
「薫!」
言葉を遮ろうと大きな声が出た。そうして薫の顔を見てまた口を噤む。
今にも泣きそうに目を潤ませて俺を真っ直ぐ見る。
「もう近づかないから安心して」
「そんなこと言うなよ……俺……」
「今までのことは忘れていいから」
「っ……は?」
忘れていいだなんて言われたらもう黙っているわけにはいかない。