罰恋リフレイン
Game Over
◇◇◇◇◇



私を大事にしているって蒼くんは全身で伝えてくれる。
水に流せる気がしていた。正直に言ってくれなかったこと、怒鳴られたことも。

私は忘れたふりをしてずっと蒼くんのことを忘れていなかった。
まだ彼が好きなんだ。だから今度こそお互いを尊重して大人な付き合いをしていきたい。

それなのに氷室さんから連絡が来るとはどういうことだろうか。
蒼くんと氷室さんの関係は学生の時までだと思っていた。だけどそれには何の根拠もない。

今も裏で繋がって私のことを笑っている。あの時の電話でそう確信した。
氷室さんは私が気に食わない。高校の時からそうだった。
大人になった今でも私を傷つけて楽しんでいる。

よりによって二人でいるときに堂々と電話してくるなんて詰めが甘い。
まだ罰ゲームが続いてるって言っているようなもんじゃない。
やっぱり香菜の結婚式の後やり直そうって言ったのは罰ゲームの続きなんじゃないか。

私と別れた後で嘘のデートの報告でもするのだろう。そうしていかに私が勘違いしてるかって二人で笑うのだ。
私がマンガを好きだったころの思い出の場所に連れていくなんて酷いことをしてくれたし。

もうあのマンガは読めなくなってしまった。
氷室さんに気持ち悪いと言われてからマンガを好きでいる自分が嫌いになった。気持ち悪い私なんかに読まれるなんて作品に対しても申し訳ないと思ってしまった。

だからマンガを封印した。捨てることはできなかったけれど段ボールにコミックスを入れてクローゼットに押し込んだ。映画第二弾も実写映画化が決まっても見に行けないし、キャストがテレビで宣伝するのも見るのが辛かった。
あの頃の自分を思い出してしまうから。

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