罰恋リフレイン

続きの言葉を静かに待った。聞きたいのに聞きたくない。
そんな俺の気持ちを悟ったのか冬木は面白そうにニヤつく。

「私のことを本気で好きかもわからない人と付き合えないって言うんだ。私みたいなキモいブスを好きになるなんて本気の告白じゃないって」

目を見開いた。薫の卑屈すぎる言葉に驚いたのと同時に俺自身が責められているように感じてしまった。

「俺は日野の言葉を聞いてマジかよって思った。日野ってブスどころか結構可愛いだろ? 何でそんな歪んだ考えになったのか不思議だった」

息苦しさを誤魔化すためにビールを一気に飲んだ。

「社員旅行のノリでふざけて告白されたと思ったんだって。からかわれて裏で笑われてるって思ったら嫌で怖いって俺に言ったんだよ」

薫に恐怖心を植え付けたのは俺だ。人から好かれて嬉しいと思うはずの気持ちを俺が壊した。

「日野から聞いたよ。高校の修学旅行のこと。罰ゲームがトラウマになったんだろうね。恋愛は苦手だって公言するほど」

淡々と話しているのに、冬木にまで責められている気がしてしまう。

「なのにまた君と一緒にいるってことはまだ好きなんだって思ったんだけど……」

冬木は目を泳がせる俺を見て「違ったみたいだね」と呟く。

「最近の日野は様子がおかしいんだ。君と何かあったの?」

暑くもないのに額が汗ばむ。

「俺は日野とならまともな恋愛ができるかもしれない」

冬木の言葉に手を握り締めた。

「ねえ夏城くん、俺と勝負しない?」

「勝負?」

「どっちが日野と付き合えるか」

この誘いに頭に血が上った。

「薫はゲームの賞品じゃねえよ!」

「夏城くんにはそんなこと言う資格ないと思うけど」

「っ……」

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