エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「す、すみません、私は──」
『あ、ごめん。急患だ。それじゃあ、透のことよろしくね』
「えっ、さ、坂下先生⁉」
だけど梨沙子さんのことを言及する前に、通話を切られてしまった。
暗くなった画面を見ながら、私はまた呆然とその場に立ち尽くした。
……どうしよう。困った。
時刻は夜の二十時をまわったところだ。ここから近衛先生の家までは車で十分。
タクシーを捕まえて飛び乗れば、二十時半前には近衛先生の家に着けるだろう。
だけど──もし、近衛先生の家に行って、梨沙子さんと鉢合わせたら?
そのときは言い訳のしようがない。
近衛先生だって、きっと困るだろうし迷惑に決まっている。
「…………」
私は、しばらく携帯電話を握りしめたまま立ちすくんでいた。
けれど不意に〝あるもの〟のことを思い出し、そっと窓の外に目を向けた。
……もし、近衛先生が梨沙子さんにも頼らず、今ごろ本当に家で倒れていたとしたら?
坂下先生の言うとおり、近衛先生が誰かにヘルプを出すところは想像できない。