エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「……っ、」


 そう思った次の瞬間、私は携帯電話を握りしめたまま自室に戻った。

 そして、カバンの中から──〝あるもの〟を入れていたカードケースを取り出した。

 中には以前、近衛先生からもらった近衛先生の家の〝カードキー〟が入っている。

 あのとき、近衛先生は『百合なら、いつでも来てくれていい』って言ってくれたんだ。

 そのときはまさか婚約者がいるだなんて思いもしなくて、ただただ幸せで、浮かれていた。


「……行かなきゃ」


 ぽつりとつぶやき、前を向く。

 カードケースを握りしめた私は、そのままお財布が入っているカバンを手に取った。

 そして顔を上げると真っすぐに玄関へ。お母さんに「ちょっと出かけてくるから!」とだけ告げると、大通りに出てタクシーを捕まえて飛び乗った。

 目的地は当然、近衛先生が待つ家だ。

 マンションの前につきタクシーを降りた私は、緊張しながらも、以前、近衛先生がやった手順を思い出しながら、エントランスを通り抜けた。

 エレベーターは先生の家がある三十五階で、自動的に止まる。

 ……って、勢いでここまで来たはいいけど、近衛先生の家のドアの前に立ったら、今さら怖気づいてしまった。

 
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