エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「何かお困りですか?」
「い、いや、別に……。ちょっと疲れたから、ここで休憩をしていただけで……」
おじいさんはバツが悪そうに私から目をそらすと、あからさまに口ごもった。
間違いない。このおじいさんは、病院を抜け出してきたんだ。
抜け出してきたのはもちろん、中央総合病院だろう。
さて、どうしたものか。
今すぐ警察か病院に電話する?
でも、目の前でそれをしたら、おじいさんは警戒して私から逃げようとするかもしれない。
パジャマの裾から見えた足首は、今にも折れそうなほどに細くて、骨ばっていた。
もし、おじいさんが焦って走りだして転んだりしたら、大怪我に繋がる可能性がある。
こういうときって……ああ、そうだ。そういえば前にも、こういうことがあったっけ。
「……おじいちゃん。私もちょっと疲れていて、休憩したいと思っていたところなんです。だから、隣に座ってもいいですか?」
「え……」
数年前に起きた〝あること〟を思い出した私は、配達用バッグを足元に置いた。
そして、ごく自然におじいさんの隣に腰を下ろした。
「今日はすごく良い天気でしたよね。こんな日は、お散歩したくなりますよね」
そして、なんのことはない。他愛もない世間話を始めた。
天気の話や昨日見たテレビの話、その他にも食べ物の話や、当たり障りのないことを、いろいろ。