エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「どうしよう……」
緊急事態だ。思わずサーッと青ざめた。
このままじゃ病院どころか、警察にも電話ができない!
「おーい、野原の娘さん。どうした?」
私が右往左往していると、おじいさんが不思議に思った様子で声をかけてきた。
ほ、ほんとにどうしよう。一旦、お店まで戻ってから病院に電話する?
でも、その間、このおじいさんをひとりにするのは不安だ。
フラフラと、どこかへ行ってしまうとも限らない。
だからと言って、おじいさんを野原食堂まで連れて行くのは何かあったときに困るだろう。
「どうかされましたか?」
と、私が頭を悩ませていたら、不意に背後から声をかけられた。
「何かお困りのことでもありましたか?」
「あ……」
弾かれたように振り向くと、そこには何故か、近衛先生が立っていた。
今日は白衣ではなく、私服姿だ。
嘘……。なんで、ここに近衛先生が?
思わず、ドキンと心臓が飛び跳ねる。
同時に、慌てておじいさんに目を向けたけれど、おじいさんはまだ植込みの段差に腰掛けたまま、不思議そうにこちらを見ているだけだった。
……よかった。どうやらおじいさんは、近衛先生の顔を知らないみたいだ。