エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「あ、あの。なるべく、大きな反応をせずに話を聞いてほしいんですけど……」
「はい?」
「実は、あのおじいさん、中央総合病院を抜け出してきた患者さんみたいなんです」
私は近衛先生にだけ聞こえるくらいの小さな声で、状況を説明した。
話を聞いた近衛先生は、一瞬だけ驚いたように目を見開いたけれど、すぐに平静を保つと、とても自然な仕草で脇道にいるおじいさんをチラリと見た。
「確かに……パジャマにコートを着ていますね」
「はい。あと、腕に入院患者さんがつけている白いタグがあるのも確認しました。それと、ここへ来る前に、おじいさんが中央総合病院の通用口の方から歩いてくるのも見ました。すみません、本当はそのときすぐに、声をかければよかったんですけど……」
私の話を聞いた近衛先生は、決定的だと思ったのだろう。
どこか悩ましげに息を吐くと、額に手の甲をあてた。
「大変なご迷惑を……申し訳ありません」
「い、いえ、私は何も……。ただ、おじいさんの話を聞くことしかしていませんから」
「患者さんの話を?」
「はい。それで、問題はここからで……。今、病院へ電話をしようと思っておじいさんから離れたんですが、私、携帯電話を忘れたみたいで持っていなくて」
思わずシュンと肩を落とした。
肝心なところで、役に立たないにもほどがある。
「本当にすみません」
「いえ、ご協力ありがとうございます。ここから先は、僕の方でフォローさせていただきます。実は、僕はあちらの病院に勤める医師でして……」
……知ってます、とは、さすがに言えなかった。
私の話を聞いた近衛先生は私とおじいさんから距離を取ると、すぐに中央総合病院へと電話をかけた。