エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「このたびは、大変ご迷惑をおかけしました」


 と、三人の背中が見えなくなったころ、不意に近衛先生に声をかけられた。


「大事に至らなかったのも、あなたが協力してくださったおかげです。本当にありがとうございました」


 改めて丁寧にお礼を言われて、私は慌てて顔の前で両手を振った。


「い、いえ! 私は本当に何もしていませんから。ただ、田所さんの話を聞いたくらいで」

「そういえば、先程もそう仰っていましたね」

「あ……はい。実は、私……もう随分前に亡くなってしまいましたが、認知症を患った祖母がいたんです」

「認知症を患ったご家族が?」

「はい。その祖母も徘徊で家を抜け出して、家族で探しに出たことがあったんです。それで、田所さんを見ていたら、そのときのことを思い出して……」


 それは、私が高校生だったころに起きた出来事だ。

 まだ祖母が生きていて、家にいたころの話。

 認知症を患った祖母は今の田所さんのように勝手に家を抜け出して、私とタツ兄ちゃんは祖母探しに奮闘したことがあった。


「そのとき、私は祖母を見つけるなり、無理矢理家に連れて帰ろうとしたんですけど……」


 祖母は、お年寄りとは思えないほどの力で嫌がって暴れて、『家には帰らない!』と叫んだのだ。

 
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