エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「それで、私が困り果てていたら、遅れて駆けつけた兄が祖母に言ったんです。〝ばあちゃん、それなら俺たちとちょっと話をしようよ〟って……。そのあと兄は本当に、祖母と他愛もない話を始めたんです」


 当時のタツ兄ちゃんは、本当に辛抱強く祖母の話を聞いていた。


「ひと通り話し終わったころ、それまで頑なに家に帰ろうとしなかった祖母が、突然家に帰りたいと言い出しました。不思議ですよね」


 そのころの祖母にはもう、私たちが自分の孫だという認識はなかった。

 けれど、タツ兄ちゃんと話しているうちに、祖母は自分に家族がいることを、ぼんやりと思い出したらしい。

 帰り道で、突然私たちに『小さくて可愛い孫たちが待ってるから、早く家に帰らなきゃ』と言ったのだ。


「そのときの祖母の顔はとても穏やかなもので、私は今でも忘れることができません。だから私は、当時の兄がしたことを真似しただけなんです」


 私と話をすることで、田所さんのモヤモヤした気持ちが少しでも晴れたらいいと思った。

 あのときの祖母と同じように……前向きな気持ちで、病院に戻れるんじゃないかと思ったんだ。


「でも、看護師さんたちが田所さんを探して大変な思いをされていたと思ったら、やっぱりもっと早くに病院に知らせるべきでしたよね」


 曖昧に笑って答えれば、近衛先生は私の顔を見て何故か表情を和らげた。

 
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