エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「それじゃあ、いってくるね!」
「はーい、よろしくね」
そうして私は煩悩を振り払うように顔を上げると、足早に中央総合病院へと向かった。
「──すみません、野原食堂です。ご注文の品をお届けにあがりました!」
私が医局についたとき、時刻はちょうど昼の十二時をまわったところだった。
野原食堂はまさに大忙しの時間帯。
だから出前の品を渡したら、すぐにお店に帰らなきゃいけない。
「おー、きたきた。腹減ったー。って、あれ? 今日の配達は、いつものシャキシャキした兄ちゃんじゃないんだ?」
と、目の前の扉が開いたと思ったら、中から爽やかな雰囲気のお医者さんが出てきた。
「あ、そういえば小池先生が、野原食堂の兄ちゃんは今休んでるらしいとか言ってたっけ」
改めて説明しなくても、どうやら事情は伝わっているみたい。
「そうなんです、すみません」
私は曖昧に笑うと、配達用のカバンをおろして持ってきた品をひとつずつ取り出した。
「こちらが天津飯と餃子セットです。それと、回鍋肉になります。あと、これが野原食堂・特製チャーハンで──」
「そのチャーハン、俺が頼んだやつ」
そのとき、不意に背後から声をかけられた。
弾かれたように振り向けば案の定、白衣姿の近衛先生が立っていてドキンと胸の鼓動が飛び跳ねた。