エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「ねぇねぇ。きみってもしかして、透の──」
「おい、坂下。百合に余計なことを言ってないだろうな」
目を輝かせた坂下先生に戸惑っていたら、タイミングよく近衛先生が戻ってきた。
「おいー! 戻ってくるの早いなっ。まさか、俺がこの子にちょっかい出さないか心配ですぐに戻ってきたとか?」
「だったらどうだって言うんだ」
「え、マジで? ほんとに? 透、なんか今日、身体の具合でも悪いんじゃないの」
また、坂下先生が驚いたように目を見張った。
近衛先生はそんな坂下先生を無視して押しのけると、さっさと自分の背後へと追いやった。
そんなふたりを見ながら、私は唖然として固まったまま動けずにいた。
「百合、いつもご苦労様」
「あ……は、はい。こちらこそ、いつもご注文ありがとうございます」
目の前に近衛先生の綺麗な手が差し出される。
出前の品の代金だ。受け取らないと。
「……っ!」
と、そう思って手を伸ばしたら、不意に手と手が触れ合い、反射的に肩が跳ねた。
「す、すみません!」
咄嗟に手を引っ込めたけれど、きっと今の私の顔は耳の先まで真っ赤だろう。
だけど近衛先生はそんな私を見てまた小さく笑うと、引っ込めたばかりの私の手を取り、商品の代金を改めて手渡してくれた。