エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「わかりました。特製ラーメンひとつですね」
つまり、それほどお医者さんの仕事は激務ということだ。
それなのに、近衛先生はどうしてうちのお店に来てくれたんだろう?
まさか、『会いに来た』って――私、なわけないよね?
「しょ、少々お待ちください」
そうだよ、違う。違うに決まってる。
心の中で首を横に振った私は、伝票を持ってお父さんがいる厨房へと向かった。
「近衛先生! お久しぶりです。あのときは色々、本当に世話になりました」
と、私と入れ替わりのタイミングで、カウンター席に座っていた常連の内田さんが先生に声をかけた。
「ああ、内田さん。お久しぶりです。その後、お変わりはありませんか?」
「はい、先生のおかげで、この通りです。もうスッカリよくなりましたよ! ほんと、あのときは先生に助けてもらわなきゃ、どうなっていたことか……。うちの家内も、近衛先生様々だと今でもよく言っています」
ふたりの会話に耳を澄ませていると、タツ兄ちゃんが別のテーブルから注文の入ったビールを持ってきた。
「内田さん、何年か前に脳梗塞で倒れて中央総合病院に運ばれて、近衛先生に助けてもらったことがあるらしい」
「そうなんだ……」
「まぁ、近衛先生はめちゃくちゃ優秀な脳外科医だって有名だしな。内田さんは、ほんとラッキーだったよ」
それだけ言うと、タツ兄ちゃんはビールジョッキ三つを同時に手に持って運んでいった。
そっか……。近衛先生ってやっぱりお医者さんとしても、すごく優秀な人なんだ。
その上、患者さんにも優しいとなれば完璧だ。
きっと、将来も有望視されているに違いない。