エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「ほんと、私ってバカだ……っ」
お父さんに言われたとおり、そもそも私には恋愛に浮かれる資格なんてないのに。
だって今の私には、恋をするよりも先に考えるべきことがたくさんある。
仕事を辞めて実家に戻ってきて、実家の食堂を手伝って……。
このあとどうするか、まだ何も決めていないんだ。
次の仕事だって探し始めてもいないし、何もかもが中途半端。
こんなんじゃ、近衛先生を思う資格すらない。当然だ。
と、考え事をしながら俯き気味に廊下を歩いていたら、
「い……ってぇな!」
「あ……っ、す、すみません!」
前から来た男の人と、すれ違いざまに肩がぶつかってしまった。
「本当にすみません!」
私は慌ててもう一度、深々と頭を下げた。
「チッ。ちゃんと前見て歩けよな──って」
「え…………?」
だけど、苛立った様子で文句を口にした男の人の顔を見た瞬間、身体が壊れた時計の針ように硬直して、動かなくなった。
う、嘘、なんで──。
「マジで? 野原先輩じゃん。久しぶりじゃね?」
「と、遠野くん……?」
ぶつかった相手は以前の職場での後輩、遠野くんだったのだ。
一見すると好青年といった印象を受ける涼やかな目元に、スッキリとした顔立ち。
けれど相変わらず軽薄そうな唇が緩やかな弧を描いた瞬間、思わず全身から血の気が引いた。