エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「何、言いたいことだけ言って勝手に帰ろうとしてんの? 俺を怒らせたらどうなるか、野原先輩なら嫌というほどわかってんじゃねぇの?」
「あ……! 返して!」
「ふぅん、今は野原食堂ってとこで働いてんだ。あ……野原ってもしかして、先輩の実家とか? そういや部長が前に、そんなこと言ってたな」
一瞬の隙をつかれて、エプロンのポケットに差していた伝票を取られてしまった。
そして、そこに書かれていた住所と店舗名を見られたのだ。
新しいオモチャを見つけたように笑った、遠野くんの言葉に鳥肌が立つ。
遠野くんとだけは、もう二度と関わり合いになりたくないと思っていたのに……!
「ふ、ふざけるのも、いい加減にして。大声あげるよ⁉」
「ご自由にどうぞ〜。そのときは俺、先輩の実家の食堂に何するかわかんないよ?」
「な……っ」
「どーせ、吹けば飛ぶようなボロい定食屋か何かだろ? ちょっと俺がイタズラしたら、すぐに潰れちゃうかもよ?」
咄嗟に反論しようとした言葉が止まる。
遠野くんなら本当にやりかねないからだ。
私が怯んだことに目ざとく気づいた遠野くんは、またニヤリと笑うと身体を屈めて私の顔を覗き見た。
「もし、先輩がこれから俺の言いなりになってくれるなら、お店への嫌がらせはしないでやってもいいけど」
ドクン!と、心臓が嫌な音を立てた。
至近距離で目があった瞬間、それまでなんとか気丈に振る舞っていた気持ちが崩れ、心が絶望感に覆われた。
……早く、早く逃げなきゃ。
遠野くんから、一秒でも早く逃げなきゃいけない。