エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「今まで、誰にも本当のことを言えず、苦しかっただろう。百合は、今日までひとりでよく頑張った。百合はもう、自分を責める必要はない」

「──っ!」


 言葉と同時に私の手に触れている手とは反対の手が、私の後頭部にまわされた。

 そして、そのまま力強く引き寄せられる。

 トクン、トクン、という胸を打つ鼓動の音が聞こえた。

 それは自分の胸の音か、それとも自分の頬が触れている近衛先生の胸の音なのか……。

 今の私には、考える余裕はなかった。


「……百合の話を先に聞いていたら、本当に危なかった」

「危ない?」

「ああ、多分……というか、俺は、あの場であの男を引き倒すだけでなく、殴りつけていたはずだ。殴る価値もない男だろうが、殴らずにはいられなかったと思う」


 私の膝の上で重なり合った手が震えている。

 それだけで、じんわりと心が温かくなった。

 近衛先生は今、私以上に私のことで怒ってくれているんだ。

 そう思ったら、なんだかとても救われた気持ちになった。


「今の話を聞いて俺なりに……というか、世間一般的な結論を言わせてもらうと、あの男のことに関しては、百合は本当に一切自分を責める必要はない」


 言いながら近衛先生は、思いもよらない話を始める。


「先ほど、あの男の前でも少し話したが、俺は先日、例の田所さんと話をしたんだ」

「あ……」


 そうだ。言われて思い出したけど、さっき近衛先生は、田所さんについて色々と知っているようだった。

 でも……確か脱走事件のときは、田所さんも近衛先生も、お互いのことを知らない様子だったよね?

 
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