エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
「全部、近衛先生と田所さんのおかげです。本当に本当に、ありがとうございました」
近衛先生の胸に頬を寄せたまま、私はそっと瞼を閉じた。
すると、後頭部にまわっていた手が、不意に頬へと降りてきた。
「ほんと、わかってないな。俺と田所さんじゃない。全部、百合の力だろう?」
「え?」
反射的に目を開いて顔を上げれば、私を見下ろす近衛先生の優しい眼差しに射抜かれた。
吸い込まれそうなほど綺麗な、黒い瞳だ。
私は思わず言葉を失って、近衛先生の目に見惚れた。
「あのとき、百合が見て見ぬふりをせずに田所さんに寄り添った結果が今だ」
「私が……?」
「そうだ。ついでに、あの男についても、田所さんは苦言を呈していたよ」
近衛先生の話はこうだ。
田所さんは、自分が経営する会社の子会社に、不本意ながらも甥を入れたはいいが、その甥の始末にほとほと困り果てていたということだった。
実際、ちょうど一ヶ月ほど前──つまり、私が辞めてすぐの頃、遠野くんは田所さんが庇いきれないほどの大きなミスをやらかしたということだった。
「子会社のほうから、さすがにもう面倒見きれないと白旗を揚げられたらしい。最近まであの男の指導に当たっていたのは非常に将来性も高く優秀な社員だったのに、その社員まで失い、こちらは散々な思いをしているという苦情まで入れられたと」
もちろん、田所さんは遠野くんの教育係を務めていたのが私だということは知らない。
近衛先生だって……きっと、今の私の話を聞いて初めて、〝ピンときた〟のだろう。