クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「……それに、結愛ちゃんの前ですし」

 伶香さんは、自分の脚にぎゅっとしがみつく結愛ちゃんを見て眉を下げた。

 さっき伶香さんは、遥人さんを『はるくん』と呼んでいた。

 結愛ちゃんが遥人さんをパパと呼んでいるところを見ていないけれど、母親の真似をしているのだと、ささやかな疑問が解決する。

「伶香。今回の件については、俺に任せてくれないか」

「でも」

「一歩間違えれば、結愛も危険な目に合わせていた。俺に責任がある」

「はるくんが、そこまで言うなら……」

 それぞれの意思を優先して思いやる姿は、絵に描いたような理想的な家族。

 素敵だなあ。私もいつか、こんなふうに暖かい家庭を持てるのかな。

 そう考えたところで脳裏によぎるのは、思いやりの欠片もなかったあの人。

 事あるごとに登場しないでほしい。忘れようとしているのに、まだ別れてから日が浅いからか簡単に記憶が呼び起こされる。

 余計な考えが浮かぶから、仕事をしている時の方が楽だったりする。

 明日から出勤できるのかな。まだ話し合いの途中だったので一抹の不安を抱かずにはいられない。
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