クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
「痛み止めの注射を打つくらいだから、相当痛かったと思う。実際、転倒した直後は痛ましげに顔を歪ませていた」

『それは可哀想だな』

「俺や結愛の前だからか、必死に涙を堪えようと強がっていた。そんな精神状態にもかかわらず、動揺している結愛を優しく気遣ったんだ」

 その姿にグッときた。本当に、こう、胸を鷲掴みにされるような感情を抱いたのだ。

 我慢強く、簡単に弱みを他人に見せない人間は好きだ。自然と助けてあげたい、応援したいと思わせる。

 これまでは仕事にかかわる人間に抱く好意だったが、今回は少し違っただけという話。

『そういえば伶香が、小春ちゃんは子供の扱いが上手だと言っていたな』

「友人の子供が結愛くらいで、よく一緒に遊ぶそうだ」

『へえ。子供好きっていうのはポイント高いな。遥人も子供が好きだもんな』

「うん、まあ」

『それで? これまでの発言を踏まえて、どこが好きなの?』

 陸は、とにかくハッキリした回答を求めているらしい。なにが悲しくて兄に恋の話をしないといけないのか。
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