クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 傷つきたくなかったので、問いただしたりせず『別れたい』とひと言伝えたら、『分かった』と、彼はあっさり了承した。

 よくよく考えたら、私たちって三ヶ月付き合ってキスしかしていないんだよね。しかも彼の家には一度も招いてもらえなかった。

 私はただの金づるで、もしかしたら本命が他にいたのかな……。

 正直告白された時はいい人だな、くらいの好意しか抱いていなかった。でも付き合うようになって、どんどん惹かれて好きになったのに。

 建物の中に入り速足で更衣室に向かう。スタッフ数人が胸になにかしらの物品を抱えて、私の横を慌ただしく通り過ぎて行った。声をかける暇もない。

 更衣室のドアを開けて誰もいないのを確認すると、服を一気に脱ぐ。

 デオドラントシートで肌に滲んだ汗をぬぐい、吸水速乾加工の水色の半袖シャツと紺色のジャージに着替える。

 これが『ロイヤルライフ星が丘(ほしがおか)』の動きやすさを重視した仕事着だ。

 介護福祉士である私、白峰小春(こはる)が勤めるここは、巷では高級老人ホームと呼ばれている。
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