クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 こっそり息をついて、箸を取ろうとする。しかしまたもや遥人さんに箸を奪われて、食べさせられる羽目になった。

 脳内が恥ずかしいという感情でいっぱいになり、美味しいはずのお寿司の味が分からない。

 ふたつめのサーモンをなんとか飲み込んだ私に、「次なに食べる?」と遥人さんが尋ねる。

 これ以上羞恥心に耐えられないので、私はお腹をさすった。

「もうお腹がいっぱいです」

 本当はお腹じゃなくて胸がいっぱいなのだけれど。

「そう? 結愛は?」

「ゆあ、ごちそうさまする」

 結愛ちゃんの言葉にホッとする。これで帰れる。

「待って、結愛。口を拭いてから。白峰さん、今のうちに薬飲んでおいて」

 椅子からすぐに下りようとした結愛ちゃんをなだめた遥人さんは、私への配慮も怠らない。

 たとえ結愛ちゃんと同じように子供扱いされていたとしても、客人として丁重に扱われているのだとしても。大切にされているのが伝わってくるのは、とても心地よくて胸が温かくなった。

 でもやっぱり伶香さんに申し訳ない気持ちがあって、浮かんだ気持ちはすぐに沈む。

 これが恋人相手であれば、嬉しくて幸せだっただろうに。
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