クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 遥人さんは静かに水輝を見下ろす。

「うちの彼女と姪が、なにかご迷惑をおかけしましたか?」

「いえ、別に……」

「そうですか。それでは失礼させていただきますね。姪も暑い中で、辛そうですから」

 遥人さんだって嫌な気分にさせられたはず。それなのに大人の対応をする姿に尊敬の念を抱いた。

 こんな落ち着いた態度を取られたら、言い返す気も起きないだろう。

 実際、水輝は不愉快そうに顔をしかめているだけで、それ以上発言しなかった。

「行こう」

 遥人さんは優しく笑い、結愛ちゃんと繋いでいない方の私の手を握った。

 大きな手に絡み取られて鼓動が一気に騒がしくなる。

 遥人さんの頼もしい身体に寄り添うようにして車に戻ると、すぐに頭を下げた。

「ご迷惑をおかけしました」

「知り合いって言っていたけど、嫌な感じだったね」

「……すみません」

「彼とは、白峰さんが謝らないといけないような間柄なのかな」

 なんとも言えない。今は別れているから関係ないけれど、今日こんなめに遭ったのは水輝と交際していた自分に非がある。

「気にしなくていいよ」

 押し黙る私に遥人さんはそれ以上質問を重ねはしなかった。その優しさに甘えて、私も口をつぐんだままだった。
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