褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「もしもし?」

「もしもし東馬ー? 今大丈夫?」

「大丈夫。何の用?」

「デートは楽しんでる? あ、ごめん、気分転換だったな!」



呑気な声に小さく溜め息をつく。

この言い方……知っててわざわざかけてきたのかよ。



「うん。おかげさまで楽しんでるよ」

「それは良かった! 今日の実玖、いつもと雰囲気違うだろ? あいつ、お前にデートを勧めた次の日に、『どんな髪型がいいかな?』って相談してきたんだぜ!」



「良かったな!」と喜ぶ景斗。

今どんな顔で話しているのか、大体想像がつく。



「へぇ~、そうなんだ。夏の妖精って感じで、すごく可愛いなって思っ……」



感想を伝えている途中で、ハッと気づき口を押さえる。

やっちまった!
また「お世辞っぽい」って怒られる……!



「夏の妖精ねぇ……まぁ、わかるかも」



予想と違う反応に目を丸くする。

あれ……⁉ なんで⁉
毎回可愛いって言ったら怒るのに!



「実玖は? 近くにいる?」

「あ……いや。実玖ちゃんは服見てる。お前が電話かけてきたから、俺今店の外で話してるんだよ」

「あらぁ~、邪魔しちゃってごめんねぇ。どうぞ、ゆっくり楽しんで♡」



おばちゃんのような口調と語尾にハートマークを感じたところで電話が切れた。


あいつ……暑さで頭やられたのかな。
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