褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「私……あまり自分の好きな服を持っていないんです」

「えっ? どういうこと?」

「その……体型が隠れる服ばかり着ているので」

「あー、そういえば初日に、細いの気にしてるってお兄さんが言ってたね」

「はい……」



手を止めて尋ねてきた先輩に恐る恐る答えた。


私が抱えている悩みは、他の女子が抱くものとは正反対なので、なかなか理解してもらえない。

場合によっては嫌味と捉えられることもある。



「本当、体型の話題ってデリケートだよね。太りづらい体質の人だっているのに。実玖ちゃんは普段どんな服着てるの?」

「えっ、あっ……よく着てるのは、パーカーとかスウェットとか。足首まである長いスカートとかです」



予想外の反応に戸惑いつつ、いつも外出する際に着ている服をあげた。



「あの……羨ましいって思わないんですか?」

「え?」



しまった、この聞き方だとすごく嫌味っぽいじゃん!



「あっ、その、自慢してるわけではなくてっ……」

「焦らなくて大丈夫だよ。言いたいことはわかるから」



もう……言葉選びには気をつけようって決めたのに。私ってば何やってるんだ。
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