褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「ねぇ、実玖ちゃん」
「は、はいっ! 何でしょうか⁉」
神妙な面持ちで口を開いた先輩。
急に静かになったのもあって緊張で声が裏返った。
ううぅ……穴があったら今すぐ入りたい。
「ここに描いた服、実際に着てみたいなって思ったことはある?」
「あ……種類にもよりますけど、ワンピースとかドレスは着てみたいですね」
「じゃあ、このドレスも?」
先輩が指差したのは、さっき兄が見ていた花のドレス。
ドレスといっても、これはパーティードレスというより、ウェディングドレスに近い。
「そうですね……でも、こういう華やかな物は私には似合わないと思います。私、全然可愛くないので……」
私はお兄ちゃんのように明るい性格でも、可南子みたいに可愛くもない。
もし私が着たら、ドレスの華やかさに顔が負けると思う。
「そんなことないよ! 実玖ちゃんは可愛いよ?」
「……っ!」
いつの間にか西尾先輩は私の目の前に移動していて、下から顔を覗き込んでいた。
その上目遣いは心臓に悪い……!