王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情
「うっ……」
今まで堪えていられたのに、急に吐き気がひどくなった。
「リリィ!大丈夫!?」
マルラがすぐに椅子に座らせて背中を擦ってくれたけど。駄目だ……胃がギュッと締め付けられたみたいに苦しい。
「リリィ!?」
「大丈夫か?」
クレア姉さんと王太子殿下が心配そうな声でそばに来るけど……今は、2人の顔を見たくない。わたしの勝手な憶測というより、女のカンというものかもしれない。クレア姉さんと王太子殿下の間に、昔何かあったんだ……という直感が。
「すみませんが、今は放っておいてくださいませんか?イチャつくお二人にはリリィに触れてほしくありません」
特大のイヤミをマルラが放つ。やっぱり、彼女にも判るくらい2人は親密な空気を出してたんだ…と気持ちが重くなった。
ますます吐き気がひどく堪えきれなくなった時、咄嗟に世話をしてくれたのは他でもない王太子殿下だった。
「……は、離れてください……汚してしまいます」
「構わない。それより、横になった方がいい。寝室は2階か?」
「え、ええ……」
クレア姉さんが困惑しながら「大丈夫?」と訊いてくるから、「平気」となんとか笑ってみせる。
(嫌なわたし……まるで見せつけるみたいに、クレア姉さんに笑って……王太子殿下はわたしの方が大切って……見せたがってる……最低だ)
たとえ2人に何があったとしても、昔のこと。わたしが立ち入れる領域じゃないし、関係ないはずなのに……。
こんな些細なことでさえやきもきして、いちいち嫉妬する自分が嫌だ。
殿下に抱き上げられ運ばれる最中、見えないようにそっと涙を流した。