王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情

「気分はどうだ?」
「……ありがとうございます…もう、大丈夫ですから。殿下は一階へ戻ってください」

水や薬湯を持ってきて下さったり、汚れた顔をわざわざおしぼりで拭いてくださる…その優しさは嬉しいのに、胸がチクチクと痛い。

その手で、クレア姉さんに触れたんですか…?なんて、嫌な事を訊いてしまいそうだ。

「……大丈夫じゃなだろう?リリィ、なぜ泣いていた?」
「……っ」

やっぱり、王太子殿下には気付かれてしまった。ほんの少し泣いただけなのに。

「……こ、これは…わたしの勝手な気持ちです。殿下には知られたくありません……ですから、お訊きにならないでください」

こんな、大切な人たちにすら嫌な気持ちを抱いてしまう…嫉妬深い自分が嫌だ。せめて自分の中で消化してしまいたいのに。
王太子殿下は、許して下さらなかった。

「クレアとの事か?」
「……!!」

わたしがギクリと体を揺らすと、殿下は「やはりな」とおっしゃって。

「クレアと話した時におまえの様子がおかしいのは気付いてた。それほど親密なつもりはなかったが、誤解を招いたのは謝る……すまなかった」

王太子殿下がわざわざ頭を下げようとしたから、わたしは慌てて起き上がろうとして殿下に止められた。

「そ、そんな…!わたしに頭を下げたりなさらないでください!勝手に誤解したり嫉妬したのはわたしで…王太子殿下は何もお悪くありません」
「嫉妬……」

王太子殿下が鸚鵡返しに繰り返されて、ハッと口に手を当てた。

(わ、わたし…言うに事欠いて…なんてことを!)

みっともない自分を見られたくないのに、王太子殿下に知られてしまった。わたしは殿下の正式な恋人でも婚約者でも妃でもないのに……。

きっと、呆れられる…そう思ったのに。

なぜか、殿下は嬉しそうな顔をされてた。

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