白+紅=蒼
少しすると急に廊下が騒がしくなった。





女子の悲鳴に近い声に私は美乃と顔を合わせて廊下を見つめる。





すると後ろのドアから姿を現したのは昨日の先輩だった。





女子の悲鳴に少し顔をしかめながらも教室内を見渡し、私の姿を見つけると昨日の優しい笑顔を浮かべる彼。





「あ、昨日の人だ」

美乃に言うと珍しく少し興奮したように私の肩を叩く。





「やっぱり美浜の貴公子よ!!碓水蒼さん!!」





私は慌てた。





彼は教室に入らずに私を見つめている。





立ち上がって彼に近付くと





「こんにちは」





優しい笑顔で言ってきた碓水先輩。





「こ、こんにちは。」





「昨日の約束守りに来たんだ。はい。昨日は本当にごめんね?」

そう言って小さな紙袋を差し出してきた。





「ほ、本当に何ともないから受け取れませんよ!」




彼の優しさに申し訳なく焦りながら両手をブンブンと振れば、先輩はクスッと笑った。




「優しいんだね。だけど受け取ってほしいな。俺の気が収まらないから。」

そう言われてしまうと困ってしまう。





躊躇したが大人しく紙袋を受け取った。





「ありがとうございます」

微笑むとさらに優しい笑顔が返ってきた。





「そう言えば自己紹介がまだだったね。俺の名前は…」




その時





「……あれ?蒼さん?」

紅の声がした。





名前を呼ばれて碓水先輩が振り返ると紅と廉が丁度飲み物を持って帰ってきたところだった。





「やぁ、紅。」





「やっぱり蒼さんだったんだ。白の話聞いてまさかとは思ったけど」





「今丁度自己紹介しようとしていたところだよ。」

紅に爽やかに言う碓水先輩。





「俺の名前は碓水蒼。2年6組で紅とはバスケ部で一緒なんだ。まぁ俺は幽霊部員だけどね」笑う先輩。





「あ、わ、私は紅の双子の妹の里中白です。1年3組で部活には入ってません。」





そう言うと碓水先輩はニッコリと微笑む。




「よろしくね、白ちゃん。」





「はい!」





「蒼さん、たまには部活に来てよ」

笑顔で言う紅





「気が向いたらな。じゃぁまたね白ちゃん。」




私たちに片手を振って歩いていく先輩。





「あの、ありがとうございました!」

私はその後ろ姿にもう一度お礼を言う。





「……いい先輩だね、紅。」

そう言うと紅は私の頭を撫でた。





「蒼さんは俺もいい人だと思うぜ。」
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