白+紅=蒼
それぞれ定食を受け取ると6人分空いている席を見つけて座る。





私と紅の向かいに美乃と廉。





これは左利きの私たち双子と右利きの美乃と廉が食べやすいようにと昔から決まっていた。





いただきます、と言って食べていると急に食堂の入り口が騒がしくなる。





不思議に思ってそちらを見れば碓水先輩とその友達が入ってきたところだった。





碓水先輩たちは周りを取り囲んでいる女子生徒たちに困ったような視線を向けながらも空いている席を探す。





グルっと見渡す先輩と一瞬目が合ったような気がした。





碓水先輩は私達を見つけると、ニコッと笑って隣にいる友達になにやら声をかけてこちらにやって来た。





「こんにちは、白ちゃん、紅。それとお友達も。」

碓水先輩はAセットであるチキン南蛮定食をトレイに乗せていた。





「どーも」紅





「こんにちは、碓水先輩。幼馴染で親友の森田美乃と東堂廉です」

私は二人を紹介する。





「はじめまして。碓水蒼です。こっちは…」





「あっれー?もしかして噂の美乃っちと白ぴょん?」





とても明るい感じで話してきたのは少し赤みのかかった茶髪をツンツンと立ててそれなりに顔の整っている先輩。





「俺は田所空也!噂の美少女二人と話せるなんてラッキー!あ、俺蒼の親友ね!」





「勝手に言ってるだけだから本気にしないでね」

さらりと笑顔で言う碓水先輩。





「ちょー!ひっでーな!俺たち幼馴染みで親友だろー!?」騒ぐ田所先輩。





「あ、一緒に座ってもいいかな?」

私の隣の席を指差す碓水先輩に





「もちろん!どうぞ!!」

私は笑顔で頷く。





「え、俺のこと無視!?俺も座るー!!」

美乃の隣に座る田所先輩。





「ごめんね、煩いのが一緒で」

謝る碓水先輩に私たちは苦笑した。





食堂中の全生徒の視線を感じるのは気のせいだろうか。





「……何かあった?紅も白ちゃんも元気ないみたいだけど。」

心配そうに顔を覗き込んでくる碓水先輩に戸惑った。




そんなに顔に出ているだろうか。





紅を見れば苦笑している。





「雨の日が嫌いなだけっすよ。蒼さん、チキン南蛮ひと口ちょうだーい」

まるで誤魔化すように私越しに箸を伸ばす紅。





そんな紅の伸びてきた手をパシっと叩く。





「こら!そんなお行儀の悪いことしないの。そんなに欲しいなら私のブロッコリーあげるから」





「いや、白とは食べてるもの同じだし。俺もブロッコリー嫌いだから」

突っ込む紅。





「へぇー。やっぱり双子って好みとかも似るんだ~。二人とも左利きだしブロッコリー嫌いで。逆に違うこととかないの?」


面白そうに質問してくる田所先輩。





「「なにかある??」」

紅と同時に言ってしまう。





「「あったっけ?」」

さらにハモる。





「あー、はいはい。もう分かったよ」

ケラケラと笑う田所先輩。





碓水先輩も微笑んでいた。





「田所先輩は何部なんですかー?」

美乃が話を摩り替えるようにして質問する。





「俺ー?俺はテニス部だよー!美乃ちゃん!今度の試合見に来てねー!」




笑顔で言う田所先輩に対し美乃はと言うと、、、





「多分無理ですー」

同じく笑顔で返していた





「えー!?なんでそんなさらりと言うのー!!」

泣き真似しながら言う田所先輩に碓水先輩がとても低い声で呟く。





「空也、いい加減黙らないと水かけるぞ?」





「すんません…」





そんな二人の会話を聞いておろおろと慌てる。





そんな私を見て碓水先輩がニコりと笑った。





「ごめんね、騒がしくて。」





「いえ、大丈夫です」





「蒼さん、今日は部活来てくれないのー?」紅





「試合も当分ないし俺が行かなくても大丈夫だろ?」碓水先輩。





「えーー。蒼さんいないとつまんねー」

ご飯を食べ終わった紅がぐだーと椅子に寄りかかって言う。





「俺と対等に渡り合えるのは紅くらいだよ」

碓氷先輩がそう言うとガバッと起き上がる紅。




そして悔しそうに私の頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。





「いや………正直言ってこいつは俺より上だと思う」紅





するとそれを聞いていた田所先輩が目を丸くする。





「え、白ぴょんって運動神経いいの?」





「運動に関してはこの学校の女子で一番じゃないかな?」美乃





「俺もそう思う」

美乃に同意する廉





「えぇ!?そんなに!?全然みえなーい!」





「皆買い被りですよ!」

慌てて否定する私だが廉と紅が何故か悔しそうに顔を伏せる。





「否定されると負けてる俺らが惨めになる……」





「凄いね、白ちゃん。」





碓水先輩に言われて私は思わず照れてしまう。






「本当にそんなことないんですよ?」





憂鬱だった気分が碓井先輩と話すことでいつの間にか晴れていた。
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