悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「まあなんにしても、若いのに森の奥に居を構えないといけないなんて、色々とあるんだろう。深くは聞かないけどね。困ったことがあれば遠慮なく相談しなよ。子供たちもいるんだからさ」

「ありがとう。細かく聞かないでくれるのは助かる」

 レイルが言うとザーシャは肩をすくめた。
「竜と人間の境界ぎりぎりにある村だからね。いろんな人間が出入りするのさ」

◇◆◇

 フリュゲン村から帰った後、わたしはとりあえずレイルを問い詰めることにした。

「で、誰と誰が夫婦よ?」
「まあまあ落ち着けって」
「どの口がいうか!」

 わたしの口調が途端に悪くなる。

「いいか。俺はな、城のその、同僚の女性騎士に聞いたんだ。任務で一人行動をするときに、その土地で知り合った人間との面倒を避けるために、旦那と一緒に行動しているように見せかけることがあるってな」

「なによ、それ」
 わたしは締め上げていたレイルの胸元の布地から手を離す。

「要するに、だ。旅人だからって地元の男に目をつけられないように、単独行動でも誰かと一緒にいるように見せかけるっていうわけだ。指輪をつけたり、宿で夫が待っているとか口にしたり。だから、リジーにも防犯の意味も込めて、女一人で森に住んでいるわけじゃないんだからねってアピールしておいたほうがいいかなって」

 わたしはレイルの言葉の意味を考えた。
 たしかに一理ある。森で女性が一人暮らしなんて聞いたら良からぬことを考える人間だって出てくるかもしれない。実際は竜の一家に居候なんだけど、本当のことは言えないし。

 どの世界でも女性は自衛をしているものなのか、とちょっと感心した。

「そういうことならまあ……仕方ないわね?」
 わたしはとりあえず納得することにした……。たぶん

「リジーはお人好しだし、変なところで鈍感だからな」
「失礼ね。わたしはこう見えて立派にしっかりやっているわよ」

 むしろ人の心の機微には敏い方だと思うよ。ヴァイオレンツがわたしのこと嫌っているってちゃんと悟って、身を引いたわけだしね。

「……いや、どうだろう……うーん」

 胸を張ったわたしに、なぜだかレイルは困ったような顔をした。
 解せぬ。

◇◆◇
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