悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 フリュゲン村は基本迷惑を掛けなければ歓迎をされる雰囲気だし、深く詮索されないところもわたしは気に入った。双子は前回よりも慣れてきたのか「あ、あれ犬でしょう! この間もいたよね」とか「あの人何やっているのかな」とかちょこまかと動き回るからわたしは二人の後追うのに忙しくなった。

 狭い村だからザーシャの家にはすぐにたどり着いたけど。
 彼女は小さい畑の方で作業をしていて、わたしが「こんにちはー」と声を掛けるとすぐに気が付いて手を振り返してくれた。

「どうしたの」

 ザーシャは土のついた手をぱんぱんっと払いながらわたしたちのほうへ向かってくる。
 木の柵で覆われた小さな畑は緑色に包まれている。
 わたしもそのうち今の家の近くで畑とか……って、完全にスローライフ楽しんでいるじゃん! 何考えてんの、わたし……。

「どうしたの?」

 わたしが自分の考えを打ち消そうと首をぷるぷる横に振っていたらザーシャがもう一度聞いてきた。

 い、いかんいかん。

「今日はこの間双子に果物をくれたでしょう。お礼に今住んでいるところの近くの川で魚を釣ってきたの。おすそ分けで持ってきたのよ」

 わたしは獲れたて新鮮なマスを掲げてみせた。
 前世の記憶持ちなわたしはそのへんの深窓の令嬢みたいに「魚こわぁい」とかそういうのは無い。普通に触れるし釣りもしちゃうよ。

「あらぁ、大きくておいしそう」

「あのね! あのね! わたしたちが捕まえたの!」
「この大きいのは僕が捕まえたんだよ」

 ザーシャのエプロンをひっぱりながらファーナとフェイルが勢いよく話し出す。
 ええ、ええ、二人とも大はしゃぎだったもんね。

 竜の姿だと魚が小さすぎてうっかりすると潰しちゃうから人間の姿で釣りをしようねとか言ったら思い切り川にダイブしたもんね(竜の姿でダイブしなかっただけ成長したよ)。手づかみだったね。うん、大変だったよ。わたしとドルムントが。

 わたしが遠い目をしている最中も二人は「あのね、川に飛び込んで魚をこう、ぐわぁぁって取ったの」とか「リジーは一匹も獲れなかったんだよ」とか「僕が岩の方に魚を追いかけて行って捕まえたの」とか自慢話に花を咲かせている。

 悪かったわね、わたし釣りが下手で。ていうか、あんたたちがばっしゃばしゃと川の中で暴れるから呑気に釣り糸を垂らしている場合でもなかったのよ。
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