悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「あはは。そりゃあすごい。おまえさんたち元気がいいし魚獲りの才能があるねえ」

「才能ってなあに?」
「魚を獲るのが上手だよってことだよ」
「うん! 僕たち魚獲るの上手なの!」
「えへへ」

「はいはい。あなたたちすごいわよ。服も靴もびっちゃびちゃにしてくれたしね」

「でもでもドル―」
「ああ、ほらほら。魚を渡すときなんて言うか覚えている?」

 ドルムントなんて第三者の名前まで出したら、この一家一体何人で暮らしているんだとか思われること必死だからわたしはさっさと話を先に進めることにした。

「あ、そうだった。ええと、ザーシャ、この間は果物をくれてありがとうござました」
「ありがとうございました。果物、おいしかったよ」

 ファーナが小さく舌を出して背筋を伸ばしてお辞儀をしたあと、フェイルも同じくお辞儀をしてお礼を言った。

「よくできました」
 わたしが言うと二人ともえへへとまんざらでもなさそうに笑み崩れた。
「こちらこそご丁寧にありがとう。じゃあ遠慮なしに美味しくいただくよ」
「うん!」

 ザーシャがマスを受け取った。

「そうだ。ちょうど食べごろの野菜があるから持って行きなよ」
「え、でも。お礼を渡しに来ただけなのに」

 ザーシャの申し出にわたしは慌てて手を振る。

「まあまあ。魚のほうが多いくらいだし」
 ザーシャは遠慮しなさんな、と言って畑を取って返しいくつか葉野菜を採ってきた。

「この季節はすぐに新しいのが生えてくるからね。今年は晴れの日が続いてありがたいよ」
「そうね。天気がいいと気分も晴れやかになるわね」

「そうそう。この村は森の恵みで持っているようなものだからね。森で採れたものを売って生計を立てているのさ。もうそろそろ甘樹(かんじゅ)の実の収穫もあるし。村人総出で砂糖をつくるんだよ」

「ガンジュってなあに?」
「甘い木のことだよ。甘樹の木から採れる実から砂糖をつくるんだ」

 あ、そういえばこの世界の砂糖ってサトウキビからじゃなくてこの世界オリジナルの甘樹の木ってやつから作られるんだっけ。
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