悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 サトウキビは魔法の世界感には合わなかったらしい。前世の記憶を思い出してから、そういえば前世とこの世界では砂糖の元になる植物が違うんだっけ、となんとなく認識はしていたんだけどね。

 その甘樹(かんじゅ)は、葡萄畑みたく同じ品種の木ばかりを植えたところには育たないらしい。森やら林のように色々な種類の木々と一緒に育てる必要があるらしく、この村では森に自生している木からシーズンになると実を採ってきて砂糖を作るらしい。

「砂糖! 知っているよ。甘いの」
「うんっ! 甘くてほっぺがとろーんってするの」

 双子がきゃっきゃと笑うとザーシャが頬をとろけさせた。
 気持ちは分かる。可愛いもんね。

「また来たらいいよ。砂糖づくりも見せてあげる」
「本当? また遊びに来てもいいの?」
 フェイルがぱあっと顔を輝かせる。

「みんなの邪魔をしたら駄目なのよ」
 わたしは一応念押しをした。

「僕、いい子にしているもん」

 だといいけれど。
 えへんと胸を張るフェイルにわたしは苦笑を漏らした。

◇◆◇

 すっかり夏がやってきた今日この頃。わたしは洞窟の外に出て、日差しの強さに目を細めた。

「リジー様ぁ。やっぱり日傘が必要ですぅ」
 ティティの声にわたしは苦笑する。
「どこの世界に山の中で日傘さす人がいるのよ。帽子で十分」
「でもぉ」

 ティティは不満そうにわたしの前に体ごと回り込む。

「リジー様の白くて陶器のような肌が夏の日差しのせいで焼けてしまうと思うとぉ~。ティティ涙が……うぅっ……」
 と言って本気で泣きだすティティ。

「あら、乙女にとって日焼けは大敵だものね。うふふ」

 わたしがどうしたものかと思案していると後ろからレイアが話しかけてきた。
 頭上に影が生まれたので、頭を上にすると竜の姿をしたレイアと視線が合った。

「おでかけ?」
「ええ。今日はルーンのところに行ってくるわ。そろそろ卵を産むようだから、そうなると次に会えるのは、だいぶ先になりそうだから」

「そっか。もうそんな時期なのね」

 もともとこっちに引っ越してきたのは卵を産むためだと聞いていた。

「竜もね、日焼けをすると鱗の輝きが少し陰るから、わたくしもお手入れは欠かさないのよ」
 レイアが顔を下にさげてわたしの顔の横で囁いた。
「まあ、積極的に日焼けをしたいかと言われたら、否と答えるけれど」
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