悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「ほんとう、あなたっていつもいい時にやってくるわよね」

 なんてわたしが少し呆れ気味に言う相手は毎度おなじみ、ゼートランドからやってくるレイル。
 そろそろ甘樹(かんじゅ)の実の収穫時期ですです~とティティが偵察に行ってきてゲットしてきた情報で、じゃあフリュゲン村に行こうかなんて準備をしていたちょうどの日にやってきたのだ。

「きっとそれは俺の日ごろの行いがいいからだろう」

 なんて謎理論でレイルは胸を張っている。
 へえ、初耳ですけど。

「あ、ちょっとその目は傷つく」
 わたしの視線に思うところがあったらしい彼の言い分にわたしは無言。

「レイルもいっしょに行く?」
「僕の背中に乗せてあげるよ」
「あはは。また今度な」

 フェイルの申し出にレイルはさわやかに返事をした。

「ほら、急ぐんだろう?」
 しかも話をそらしたし。

「うん!」
「リジー、早く行こうよう」

 わたしの傍らでぴょんぴょん跳ねる人型フェイルとファーナ。わたしは二人に急かされ、ドルムントの作ってくれた風の中に入った。そうすると彼がわたしを村まで運んでくれるってわけ。

 ちゃっかりついてきたレイルは眼下に広がる雄大な自然にテンションをあげつつ、「今回の俺はいつもとは違うんだ。なんと、一泊二日の夏休みを職場からもぎ取ってきた」と嬉しそうに伝えてきた。

「へえ」
 騎士様だって夏の休暇くらいはあるでしょう。無かったら相当のブラック職場だよね。

「でもせっかくの休みなのに、もっと有意義に使ったらいいのに」

 例えば領地の視察とか、普段は出来ない自己研鑽とか色々と。なんてことをわたしはレイルに言ってみた。

「いや、黄金竜の一家の元で過ごす夏休みだって有意義だよ。誰もかれもが経験できることではないし。俺にとっては十分すぎるほど充実している」

 まあ確かに魔法使い全員が竜とお友達になれる、なんて呑気な世界でもないし。黄金竜と過ごしていて感覚がおかしくなり始めていたらしい。

 まずいな。普通の感覚にちゃんと戻していかないと。

「レイアたちいい人、いえ、いい竜だものね。最近は双子のいたずらも少なくなってきているし」

「それはリジーの手柄だな」
「そうかな」
「リジーの作るお菓子もうまいし。すごいよな。手際よくささっと作れて」
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