悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「あんなの、ちょっと練習したらみんな作れるようになるわ」

 だからおだてても何も出ないんだから。
 レイルは屈託なく、本心でほめてくるからわたしはいつもどうしていいのかわからなくなる。公爵令嬢相手への機嫌取りとかじゃなくて、素でほめてくるから。

「そうかな。俺はリジーの作るお菓子好きだよ」
 あ。いまのそれ不意打ち。

「そんなこと言っても……。まあ、昨日作ったクッキーの残りとかならないこともないけど……」
「やった」

 ……もう。
 そんなふうに喜ばれると調子狂うなあ。無駄に胸が……いや、なんでもない。気のせいだって。

「ふたりで内緒のお話しているぅー」
「ずるーいっ」
 竜の姿でわたしたちの隣を飛んでいるファーナが口を挟んできて、そのあとフェイルも同調した。

「べ、べつに内緒じゃないわよ!」
 わたしはなぜだか後ろめたくなってちょっとだけ強めに反論してしまった。

◇◆◇

「ねえー空飛んじゃダメ?」

 わたしにこそっと話しかけてきたファーナに、わたしは「村の人たちに見つかったら、もう人間の村には遊びに来られなくなるわよ」と囁いた。

「むう……」

 ファーナは唇を尖らせたがわたしの「人間はね、全員が魔法を使えないの。あなたが竜だってばれたら大変なことになるのよ」と重ねると「……わかった」と不承不承頷いた。

 所は森の中。

 今日は村人総出で甘樹の実を収穫しに森へ入っている。
 村でザーシャに落ち合い、収穫を手伝うって伝えたら籠を渡されて「助かるよ」と言われてここにいる次第。

「だって、全然届かないもん。つまんない。わたしも木登りしたい」
「たしかに」

 森の中に自生している甘樹の木。実をつけているのは木の上の方で、木登り名人な人たちが器用に登っていく。細い枝なのに落ちる気配もなく器用に伝っていき、実をもいで下へ落としていく。

 ちなみに村のおっちゃんから「きみたちはまだ小さいから登っちゃだめだよ」と言われてしまった。

「僕も木登りできるよ」
 フェイルは木登り名人の技に目を輝かせている。

「よし。じゃあ俺とどっちが早く登れるか競争だ」

 ちょっとそこのでっかい子供。

「よし、じゃないわよ。なに一緒になって目を輝かせているのよ。そこは危ないから止めるところでしょう」
「木登りは男のロマンだぞ」
「そんなロマン知らないわよ」
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