悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「じゃが、夏の間に獲れる薬草はしばらくは間に合っている。おまえさんの他にも持ち込むやつがいるからな。村の連中も街へ売りに行く。供給の方が多くなれば値が崩れる」

「それは……たしかに」

 ギーゼンの言い分にも一理あるからわたしは頷いた。
 誰でも見つけられる薬草よりは希少性の高いものを売った方が手っ取り早いけど、そうすると今度は出どころというか、どこで採ってきたのか聞かれる可能性もあるしなあ。森の奥、それも精霊の好意ですとか言えないし。

「今、となりのアルマン村に王都から魔法使いが来ている。そっちに売りに行ったらどうだ?」
「王都から?」

 わたしはびっくりした。
 こんな田舎に王都から魔法使いが来るなんて。

「なんでも魔法の研究の一環らしい。魔法使いはみな金持ちだからな。興味のある薬草なら高値で買ってくれるんじゃないか」
「え、ええ。そうかもしれないわね」

 この世界で魔法使いというのは特権階級の人を指すからお金持ちというのもあながちはずれじゃない。わたしだって元公爵令嬢だったわけだし。

「年の若い、研究者の男といいところのお嬢さんらしい」
「へえ……」

 やけに詳しいな、なんて思っていたら考えが顔に出ていたらしい。

「王都からの客人は珍しいからな。すぐに噂になる。特にお嬢さんの方は相当に身分が高いらしいが、向学心旺盛で魔法の勉強のためにわざわざこんな田舎まで出向いてきたらしい」

「それは……珍しいわね」
「ああ。護衛の兵隊がわんさか同行しているらしい。おかげで食料が足りないと、こっち(フリュゲン村)まで調達に来た」

 ギーゼンは迷惑そうな声をだす。そこは食料が売れるからよいのでは、と思うけど。

「なにか、問題でも?」
「小さい村だからな。貯蓄をしている食料だって限界がある。急に言われても困るんだよ。しかも男が多いとなると量を求められる」

 なるほど。

「けれどおまえさんにとってはいい商売相手になるんじゃないか? 王都のお嬢さん相手なら、珍しいと高値で買ってもらえるかもしれん」
「あなたは売りに行かないの?」

「行ったが門前払いされた」
 ギーゼンは小さく肩をすくめた。

「じゃあわたしが行っても同じじゃない?」
「さあな。魔法使いは気まぐれだからな」

 ギーゼンの回答はいつも素っ気ない。
「でも、やめておくわ。都会のお嬢さんなんて、緊張しちゃうもの」
「そうか」
 ギーゼンは何も言ってこなかった。
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