悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
◇◆◇

 その日の夜、わたしはちょっとだけそわそわした。
 なにしろいつもは夕方前には帰っちゃうレイルが夕飯時も一緒だから。

 人間用の食堂での食事は基本的にわたし一人で、というか給仕のティティと二人きりだし。だから向かい合ってレイルと食事するのが変な感じだった。

 泊りが嬉しいのか、レイルは始終ご機嫌でご飯が終わると夜の散歩を提案してきた。

「夜の森ってなんもないわよ」
「まあまあ。楽しいこともあるかもしれないだろう」

 レイルに宥められたわたしと、夜の散歩という蠱惑的な響きに魅せられた双子。
 お母さん(レイア)の「あまり遠くにいかないのよ」というお許しの言葉を貰った双子の騒ぎっぷりは半端ない。

 普段とは違う何か、ということが嬉しいのは竜の子供も同じらしい。

「それで、外で何をするのよ。星くらいしかないわよ」

 都会とは違い、暗い森の空を見上げると満点の星空で。それはもうきれいで、わたしは部屋の窓からよく眺めているけど。

「俺がとっておきを見せてやる」

 そう言って、レイルは両腕を高く上げた。
 小さく口の中で呪文を唱える。魔法を使うのだ。
 真っ暗な森の空に光が生まれた。

「わぁ……」

 わたしたちの頭上にちりちりと炎が生まれる。赤や黄色、少し緑っぽい炎の粒が弾ける。
 花火が暗い空を照らす。

「すごいすごい!」
「こんなの初めて見たわ! お母様たちも呼んでくる!」

 ファーナがくるりと踵を返して「おかあーさまー」と大きな声を出しながら駆け出す。
 レイルは炎を操り、繊細な花火をいくつも作り出す。

「まあ確かに、見事ですねぇ。悔しいですけど」

 わたしにぴたりと張り付いていたティティが感心している。
 王都ではお祝いの際に花火があがった。一流の魔法使いたちがその技を競い合い、花火が上手な魔法使いは女性にもてたりもする。

「きれいね」

 そこまで大きなものではないけれど、明るい緑色から黄色を隔ててオレンジへ変化をしていくグラデーションが繊細で美しい。光の滝がすぐ近くから落ちてくるような錯覚。

「人間は私たちの思いもしない魔法の使い方をするね」
「とてもきれいだわ」

 いつのまにかミゼルとレイアも外へと出てきていた。

「お母様も、あれできる?」
「んー、練習が必要ね」
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