悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 レイルはとっておき、とばかりに大きな花火を頭上に描いた。
 暗い空に花が咲く。

「すごいわね、レイル。あなたやっぱり魔法すごく得意なのね」

 わたしは素直な賞賛を贈った。それからちょっとだけ悔しくなる。
 わたしもずっと魔法の勉強をしていたから。

 もう捨てたと思っているし、この数か月わたしは魔法を使っていないのに。彼がどれだけ努力をして今の魔法が使えるまでになったのか分かるから、素直にすごいなあと思う反面わたしも追放エンドの無い普通の令嬢としてこの世界に生まれ変わっていたら、学園を卒業した後も魔法使い見習いとして修業する日々だったのかななんて思ってしまう。

「そこまででもないよ。俺よりすごい人間もたくさんいるし」
「でも、すごいわ。とってもきれいだった。花火なんて久しぶりだったもの。楽しかった」

「本当?」
「もちろん」
「じゃあ大成功だな」

 わたしは何度もすごいを連発した。きれい、すごいって何度も。

「こんなにもすごい花火をわたしたちだけで、なんて。贅沢だわ」
「リジーが気に入ったんだったら、今後俺はリジーのためにしかこの魔法は使わないよ」
「!」

 しっとりとした声が聞こえてわたしは思わず固まってしまう。
 い、今ここでそういうこと言う?

「ほらほら、子供たちもう寝る時間よ」

 レイアが双子を急かし始める。
 え、ちょっと待って。レイア、置いていく気?

「えええええ~。僕まだ見たい!」
「レイル~、もう一回」
 双子の駄々が今日は頼もしく聞こえる。

「とは言ってもな。今しがた今後リジーのためにしか花火魔法は使わないって約束したし」
「え、わたしそんな約束」

 したっけ? レイルの一方的な宣言だったような。

「だめですよ、お二人とも。ここはひとつ大人になってレイル様の応援をして差し上げてください」
「ドルムントまで!」

 わたしは恥ずかしくなって叫んだ。
 なんでみんなしてさっさと先回りしちゃうかな!

「ああもう。ここだといまいち決まらないな!」

 レイルが突如わたしの腕をとり、駆け出した。
 え、ちょっとどこへ連れて行く気なのよ! 森の中は真っ暗なんだって。

「レイルったら、ちょっと」
「しっかり捕まっていろよ」

 レイルはわたしの話だと聞かないで、あろうことか背中に手を回してもう一度呪文を唱えた。
 ふわりと体が浮くのを感じる。

「え、ちょっ……」
< 116 / 165 >

この作品をシェア

pagetop