悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 あれよという間に地面が遠くなる。
 わたしたちは洞窟のある、切り立った崖の上へとやってきた。

 レイルが魔法で灯りをともす。淡い光の玉がいくつか浮かび上がる。幻想的な光景に思わず見とれてしまう。崖の上は少し開けていて、レイルは持っていた外套を取り外し地面に敷いた。

 座れということらしい。わたしはお言葉に甘えることにする。
 ていうか、このあとどうしたらいいの? 

 わたしは柄にもなく緊張した。
 座ったわたしとレイルはしばらくの間、互いに黙り込んだままだった。

 どうしたものかな。うーん……、などと心の中では適当なことを吐き出しているんだけど、口には出せず終い。

 夜の星座観察ならもうちょっとそれらしい説明くらいしてくれっていいのに、とか心底どうでもいいことを考えていると、レイルが「あのさ!」と大きな声を出した。

「はい!」

 ついわたしもちょっと大きめの声で返事をしてしまう。
 って、どこの青春映画か。

「リジーは、このあとどうするかって具体的にもう決めた?」
「こ、この後?」

 なんだ、そういう話か。
 ちょっと前の発言が意味深すぎたから、深読みし過ぎちゃったよ。

 はぁぁぁ、とわたしは胸の中で盛大に息を吐いた。

「そう。前にも言っていただろう。ミゼル夫妻のところにいるのは一時的なことだって」
「ええ、まあそうね」
「それで、リジーさえよかったらなんだけど、行くところが無いなら俺のところに来ないか?」
「へっ?」

 俺のところってどういうところでしょうか。
 色々な深読みができる台詞にわたしの心臓がどきどきする。今が夜で心底よかった。顔、絶対に赤くなっているから。

 わたしのまぬけな声に、彼は言い方がまずかったと悟ったらしい。

「だから、ほら。俺の勤め先。ゼートランドの王宮なら多少のコネくらいあるし、リジーくらい頼もしかったらすぐに向こうでの暮らしにも慣れると思うし」
「頼もしいって、それって褒め言葉?」
 女の子に頼もしいってちょっと引っかかるけど。

「もちろん。俺的に最大級の賛辞だ」
「それはどうもありがとう」

「あ、信じてないな。俺は、年中澄ました顔した人より、良く笑って元気が良くて、物怖じしないリジーの方が断然いいと思う」

「そ……それはどうも、ありがとう」
 さっきから同じ言葉しか返せてない。
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