悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 なんとなく、お互いに感じていることはあるんだろうな、ということは分かっていた。仕草とか会話の内容とかでどのくらいの身分に属しているのか、この世界ではわかってしまうから。

 だけどこの場所に、ミゼルたちのところにいる限りその話題は持ち出さないと決めつけていた。
 ううん。そう思っていたのはわたしだけだったみたい。

「……悪い。気になって、調べた。といっても、俺じゃない。俺の……部下が」
「人を使えるくらいに、高い身分だものね」

 つい皮肉が口に出てしまう。

「いや、積極的にってわけじゃない。けれど、調査結果を見たのは俺だ。だから、俺の責任でもある」
「べつに、どうでもいいわよ」

 わたしは冷めた声を出す。部下が先走ったのか、レイルが部下に命じたのか。
 それはどうでもいい。だって、レイルはわたしの身元を知っているのだから。

「勝手に調べて悪かった」

 わたしの言いたいことをしっかりと理解しているレイルは謝った。
 しかし、わたしの心はとげを逆立てたハリネズミのようになっていた。

「それで。わたしを今更オモテに引っ張り出してどうしたいの? 王太子に婚約破棄されて、幽閉されかけたのを逃げ出した悪役令嬢ですってゼートランドの人たちに見せびらかしたいの?」

「別にリジーが悪い話でもないだろう! あきらかにトカゲのしっぽきりじゃないか」
「さあね。わたし、本当に性格悪くて陰でいろんな人をいじめていたかもしれないわよ」
「俺はリジーの人となりを知っている。リジーは明るくて優しくて、頼もしくて。いい人だ」

 レイルはどこまでもまっすぐだった。

「わたしは逃げだしたの。みんな、信じてくれなかった。わたしは何もしていないのに、わたしが学園で生活をしているだけで悪いことは全部わたしのせいってことになっていって。でもそれは仕方のないことだった。だってわたしが悪役令嬢だから。だから、しょうがないって、婚約破棄される運命も受け入れた。だけど、さすがに何もしていないのに幽閉だけはされたくなかった。だから、仮死状態になる薬を王都で探して、こっそり忍ばせて飲んだの。リーゼロッテ・ベルヘウムは死んだことにして、わたしは普通の魔法の使えない人間として第二の人生を歩む予定だった。それがちょっと色々あって今こんなことになっているけれど。だから、もう放っておいてほしい」
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