悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 わたしは一気に言ってから立ち上がった。
 崖の淵へと進んで息を大きく吸った。

「リジー?」

 レイルが声を掛けてくる。慎重に。
 わたしは少しだけ振り返る。

「ご存じなら、隠す必要もないものね。久しぶりに使うけれど、一応わたしもずっと魔法を習っていたもの」

 わたしは久しぶりに魔法を使った。
 ふわりと体が宙に浮かび上がる。

「おやすみなさい」
 わたしはそれだけ言って、そのあとは振り返らずに自分の部屋へと直行した。

◇◆◇

 砂糖の作り方はなかなかに大仕事だった。

 まずは皮を剥くところからなんだけど、固い皮はなかなか剥くことができない。器用にナイフを使ってぽんぽんテンポよく皮むきする女性陣にわたしは「慣れってすごい」という感想しかでてこなかった。

 剥き終わった甘樹の実の中は白くて、果汁を舐めさせてもらったらちゃんと甘かった。
 この実を適当な大きさに切ったら機械で果汁を搾り取る。

 工程がいくつもあるから村人総出。搾りかすは子供たちが口に含んでいる。甘くておいしいから人気みたい。

 あとはしぼり汁をひたすらに煮詰めていって水分を蒸発させる。途中あくをとったり、不純物をとったり。結構大変。
 火の加減とかき混ぜるのは男の仕事らしい。

「さああとはひたすらに火の番だよ」
「今年は豊作だったねぇ」
「若い木もちゃんと育っていたね」

 女性陣は口々に今年の感想を言い合いながら作業を終えた。村長の家の裏にある小屋に機械が置かれていて、そこで作業をしていた女性たちは肩を回しながら今度は食事の支度にとりかかるという。

「毎年の恒例行事でね。みんなで外に集まっての作業だろ。お祭りみたいなものさね」

 ザーシャは歯を見せて笑う。
 村の共同作業の中でも年に一度の砂糖づくりは、特別なのかもしれない。村の子供たちも楽しそうに手伝っている。

「このあとはどのくらい煮詰めるの?」
「量にもよるけれど、一昼夜ってところかな。どろどろになってきたら取り出して今度は乾燥させて、それを砕いたら出来上がり」

「できあがりが楽しみね」

 ザーシャたちについて歩いていった先は村長の家の厨房。
 といってもわたしの現在の住まいの厨房よりもだいぶ簡素な設備だけど。というかあの厨房設備が整いすぎなのよ。
 厨房ではすでに何人かの女性たちが忙しそうに働いていた。
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