悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 フェイルとファーナを連れていくと邪魔になるので、わたしは入口で立ち止まる。

「フェイル、ファーナ。二人とも村の子供たちと一緒に遊んでおいで。お母さんのことちょっと借りるね」

 ザーシャに言われた双子は少しだけ不安そうに瞳を揺らした。
 人間の村に慣れてきたとはいえ、同世代の子供たちにはしっかり人見知りを発動中なんだよね。わたしに初めて会ったときの馴れ馴れしさを思い出してほしい。

「う、うん……」
 二人はもじもじしながら小さく頷いた。
「ほらあっち行こうよ」
「あ、ちょっと」

 後ろからやってきた村の子供に手を引かれたフェイルにわたしは咄嗟に声を掛ける。
 子供たちだけにして万が一にもテンション上がりすぎて竜の姿に戻ったら。

「大丈夫だって。子供なんてちょっと一緒に遊んだらすぐに仲良くなるもんだから」
 そりゃ人間同士の子供ならね。
「だけど……」

「リジーは心配性ね」
「子供って親の知らないところで大きくなっていくものよ」
 わたしの心配性に厨房の女性たちが口を挟む。

「う……」

 まあ仕方ない。ファーナも一緒に行っちゃったし。なるようになる、よね……?
 くれぐれもみんなのまえで魔法は使わないでほしいところだけど。

「リジーもパン種を丸めるの手伝ってよ。そのかわり帰りにちょっと持って帰っていいから」
「ありがとう」

 わたしは手を洗ってから厨房の人たちの作業に加わることにした。
 そういえばわたしパン作りって前世の小学校の授業以来だわ。
 パン種を丸めて形を整えていくうちにわたしはとあることを思いつく。

「ねえザーシャ、それからマリーも。あのね、ちょっとやってみたいことがあるんだけど」

 わたしはザーシャともう一人捕まえて計画を話した。
 せっかくだし、ちょっと工夫というか美味しい食べ方の提案。

「ふうん……美味しいそうだね」
「美味しいわよ」

 わたしは自信たっぷりに答えた。

「じゃあリジーに任せてみようかい」
「もう窯の火はいい塩梅なのよね」
「ああ、火の加減はばっちりだよ」

 じゃあお言葉に甘えて。
 わたしはザーシャに欲しい食材を伝える。

 厨房の中ではパンの他に総菜も作られていて、玉ねぎや細かく切った肉と芋、それからハーブを一緒に鍋に入れて火を入れたものに野菜を煮たスープ。
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