悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「いやね、リジー今日元気なかっただろう。案の定あの旦那と喧嘩したって」
「いやしてないよ?」
 わたしは一応否定したけれど、一同うんうんと頷いたらあとはもう大変。

「まあ旦那ってそういう生き物だからねぇ」
「うちもだよ。もうちょっと甲斐性があればねえ」

「こんな田舎だからさ。お互いに小さいころから知った仲だろう? 遠慮ってもんが無いのさ」
「ほんと一言多いんだよね。余計な一言をいつも言ってくれて」

「ああわかる。日とのことをとやかく言う前に、おまえはどうなんだって言いたいよ。まったく」
「わかるよ。ほんとうだよね~」

 厨房の中は一気に愚痴大会になり果てた。
 わたしはベーコンをピザ生地の上にちりばめながら考える。

 わたしが今回むかっとしたのは、勝手に人の正体を探ったからだ。レイアとミゼルと一緒に住んでいる、ちょっと訳ありの少女という位置づけのままにしておいてくれたらよかったのに。

 それを、陰でこそこそ人の背景を調べるなんて。
 けれど、レイルがゼートランドにわたしを連れて行く気ならそういうことをするのも仕方が無いのかな、と思う。やっぱり身元は大事だし。王宮で働くとなれば余計に。

 ともすればレイルの立場が危うくなるから。
 だったら放っておいてくれればいいのに。

 わざわざわたしを引っ張り出そうとしなくてもいいのに。
 と、そこまで考えたわたしはレイルの言葉を思い出す。

 花火を見て喜んだ私に向かって、レイルは今後花火魔法はわたしのためにしか使わないなんて、気障ったらしいことを言った。ちょっと、ううん、かなりドキドキした。

 そんなこと今まで言われたことなかったし。
 だからなんていうか、二人きりになったとき年甲斐もなく緊張だってしたし。

 あ、年甲斐もなくって、わたし今十七か。青春真っ盛りの年だから年相応に緊張してもいいんだよね。うん。だってまだ十七だし。

 それなのに、レイルはあのタイミングでわたしの正体を知っていることをカミングアウトした。
 心の声が細長くため息としてわたしの口から漏れたとき。

 別のおかみさんが勢いよく駆け込んできた。

「た、大変だよっ! みんな」
「どうしたんだい。そんなに慌てて」

 女性陣が息をぜーはーさせているおかみさんを取り囲む。

「そ、それが……さ。隣の村に居座っている王都のお偉い魔法使いがうちの村にやってきたんだよ」
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