悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「えええっ」

 一同声を出して驚いた。
 わたしも驚いた。どうしてまた、こんなところに。

「なんか調査? の一環でこっちまで足を延ばしたらしい。ちょっと聞きたいことがあるってんで、わたしらを呼んでいるんだよ」

「またこの忙しい時に」
「これだから王都の連中ってやつは」
 女性陣はやれやれと肩をすくめつつ愚痴りながら外へと出て行こうとする。

「リジー、あんたはどうする?」

 ザーシャが振り返ってわたしに聞いてきた。わたしはこの村の人間ではないし出て行く義務はない。

「う、うん……」

 正直、王都の魔法使いと顔を合わせたくはない。
 わたしは窓から外を伺う。村長の家というだけあって、この家は村の中心に位置しているし、来客があれば村長が対応するのは当然のこと。

 外には、立派な馬車が停まっている。そのそばに佇む人物の顔を見たわたしは、呼吸を止めた。

 兵隊の中心にいる魔法使い二人。
 ちらりと見えた、女性の顔が。私の知っている人だったから。

 どうして……、フローレンスが?
 わたしは目を見開いて、口をぱくぱくさせた。

「どうしたんだい?」
 何もしゃべらないわたしをザーシャが怪訝そうに見てきた。
「う、ううん。なんでもない。わたし、そろそろ帰らないと」
 乾いた口で、それだけを言った。

「わかった。客人の気はわたしたちが引いておくから、裏からそっと帰りな」

 ザーシャはそれ以上のことを聞いては来なかった。
 正直ありがたい。わたしは「ありがとう」とだけ言った。彼女はそれに対して小さく頷いた。

 裏口から目立たないように外へ出て、それから村の外へ出たわたしはドルムントに頼んでフェイルとファーナを呼んできてもらった。突然の訪問者に興味津々だった二人は名残惜しそうにしていたが、わたしの「あの人たちに見つかったら王都に連れ戻されるかもしれない」という言葉に首をぶんぶんと横に振り「だめ! リジー帰ったらだめ」と言ってくれたことがちょっと、いやかなり嬉しかった。

 それにしても、どうしてゲームのヒロインのフローレンスがこんな国境沿いの片田舎の村にやってきたんだろう。そんなのシナリオにだってなかったのに。

 あ、でもわたしの追放でゲームは一応エンドロールになったのか。
 だったらわたしが知らなくても無理は無いのかも。

 とにかく、リーゼロッテ・ベルヘウムが実は生きていていましたなんてことが知られると面倒なことになるのは間違いないから、絶対に見つからないようにしないと。
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