悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
◇◆◇

 レイルの訪問が途絶えた。

「最近レイル来ないねー」
「ねー」

 双子が寂しそうな声を漏らした。
 わたしは何て言っていいのか分からずに曖昧に頷く。
 双子が寂しがっている中でティティだけ機嫌がいい。

「うふふ。ティティはすこぶる元気ですぅ」

 上機嫌で宙を漂っている。ぷらんと垂れ下がった赤い髪がファーナの頭にかかり、彼女が「くすぐったぁぁい」と頭を振る。

「でももう一カ月も会ってないもん」

 せっかく飛ぶの練習しているのに、とぼやくのはフェイル。
 どうも、もっとうまく飛べるようになったら背中に乗せるという約束を交わしていたらしい。
 もっとうまく、というか安全運転とは何か、をマスターしてからにしてほしいけど。

 あの人、ゼートランドでそれなりの地位にいる人なんだから。万が一にでも空の散歩をしている最中に落っことして怪我でもさせたら大変。

 と、ここまで考えたわたしは思考を切り替えることにする。
 前回わたしはレイルが勝手に人の身元を調べていたことに対して怒った。だから、彼はたぶんもうここには来ないと思う。

 わたしは思考を切り替えて取ってきた薬草を仕分ける作業を再開させる。
 季節は晩夏で、夜になると風の中に冷たさを感じるようになってきた。

 深い森の中。夏は短い。
 山での冬ってどのくらい寒いのかな。暇つぶしに本とか取り寄せた方がいいのかな、なんて考える。

「あなたも寂しそうね、リジー?」
 わたしの耳元に顔を寄せるのはレイア。

「そんなこと、ないわよ……」

 言うものの、こんなにも長いことレイルが姿を見せない原因がわたしにもあると思えば覇気が無くなるというわけで。

 いまのわたしの言葉にはあまり元気がない。
 レイアは笑いを含めながら息を吐く。
 竜の姿だから彼女の息でわたしの髪の毛が少し揺れる。

「そお? あなた最近お菓子作ってもちょっと物足りなさそうにしているし。てっきりどこかの誰かに食べてほしいのかと思っていたわ」

「わたしはフェイルとファーナが喜んでくれたらそれでいいもの」
「あら、わたくしもあなたの作るお菓子は大好きよ」
「ありがとう」
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