悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
「そうだわ。日々のお礼も兼ねて、ちょっとお散歩に行きましょうか」
「お散歩?」
「そう。たまには女同士、内緒のおしゃべりも必要じゃなくって?」

 レイアはそう言ってウィンクをする。
 さあ乗りなさい、と促されたわたしはレイアの背中に乗ることにする。鱗に手を添えるとひんやりとした感触が伝わってくる。

「ああああ~、お母様だけずるいっ!」
 すぐに何をするつもりか気が付いたファーナが叫んだ。

「たまには大人同士、じっくりお話することも大事なのよ。ミゼル、子供たちのことよろしくね」

 今この場にいない夫の名前を呼んだレイアはゆっくりと体を宙に浮かせる。
 レイアの背中に乗るのは二回目で、彼女が「じゃあ行くわよ」と言った次の瞬間、ふわりと風が舞う。

 あっという間に地面が遠くなったのに、襲い掛かる浮遊感はそれほどでもない。体の負荷を感じないということはレイアが魔法を使ってくれているんだと思う。

 ちなみにドルムントが風で送ってくれるときはこんなにも急上昇しないので体が徐々に慣れていく感じ。

 ずいぶんと早いスピードで飛んでいるはずなのに、前回と同じで体に受ける風圧は地上にいるときより若干強いかなと感じる程度で、わたしはレイアと話す余裕がある。

「レイルと喧嘩したの?」

 レイアの声は優しかった。
 好奇心からでもなくて、かといって押しつけがましくもない、お姉さんがけんかの仲裁をしたほうがいい? とやんわりと提案するような声音。

「んー、喧嘩というか……ちょっとわたしが怒ったというか」
「どうして?」

 わたしが素直に話す気になったことを感じたのかレイアが先を促す。

「彼、わたしの身元を調べていたの。部下が調べてきたって言っていたけれど。わたしがシュタインハルツの王太子に婚約破棄されたこととか。きっと、わたしがどんな評判だったのかも知ってる」

「そう。あなたは、それが嫌だったのね」
「そりゃ、わたしが自分から言うまでもなく……素性を知られて……やっぱり気分はよくないわ」
「そうね。女の子には秘密の一つや二つあるものだもの。勝手に暴くのはよくないわね」

 レイアは肯定してくれた。
 ミゼルもレイアもわたしの素性を知っている。
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