悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
 確かに彼らもわたしが起きる前にわたしのことを調べた。精霊たちの協力を得て。そのときは、子供の持って帰ってきた人間がどんな人物か知りたいのか、親なら当然かと納得したのに。

「わたし、今はレイアたちの好意でここに住まわせてもらっているでしょう。だから、この森にいる間はただのリジーでいられたし、それだけでよかったのに。わたしもレイルのことを根掘り葉掘り聞かなかった。だからレイルもわたしのことはただのリジーだって思っていてほしかった」

 竜の領域内で出会ったから。
 だから、人間の国での肩書とか生い立ちとかそういうものは関係なく過ごして、それが心地よかった。

「彼はどうしてあなたの身元を調べたのかしら?」
「わたしに、ゼートランドの王宮に来ないかって。今後のことを考えているのなら、ゼートランドの王宮で働いてみたらどうかって」
「あら、ずいぶんと性急ね」

 レイアはくすくすと笑い声をあげた。

「それで、わたしみたいな身元不詳の人間が王宮で働けないって言ったら、彼が自分がわたしの身元引受人になると言い出して。それから話が転がって、わたしの出自を知っているって話になって……」

 つい、可愛くない言い方をしちゃったことをわたしは正直に話した。

「わたくしはあなたにずっとここにいてほしいと思っているけれど」
「でも、いずれフェイルもファーナも大人になって巣立っていくでしょう。わたしも次のことを考えないと。すぐにおばあちゃんになっちゃう」

 人間と竜の時間は違うから。
 冗談めかしてわたしがそう言うと、レイアは笑ってくれた。

「わたくし、あなたのそういうところも好きよ。頼ってほしいけれど、依存もしないあなたの姿勢は素敵だと思うわ」
「ありがとう。わたし、自分の力で生きていけるようなりたいのよ」

 公爵令嬢として生まれ変わって、シナリオ通りに生きてきた。ちょっと頑張って上がら王都もしてみたけど、学園に入りたくないって言ったとき。父は激高したっけ。公爵家の人間がシュリーゼム学園に入学したくないなどとよく言えたものだなとかなんとか。伝統とか体面とかいろんなことを言われてわたしは悟った。この家族は家族という入れ物だけで、中身は空っぽなんだなって。
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